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Amazon.co.jp:海と毒薬
 戦中の九州、米軍捕虜の生体解剖実験が『海と毒薬』の中核である。
 けれど、作者:遠藤周作はそれを糾弾するでもなく、その是非を問い詰めようとしているわけでもないように見えた。おそらく彼の描き出したかったものは、戦争という黒い海の大きな波のうねりに飲み込まれてしまう、人間の(あるいは日本人という民族の)本質なのだろうと思える。
 日本人の宗教観は、おおむね「苦しいときの神頼み」のようなもので、確固たる神をもたない。仏教も、キリスト教も、神道も、かたちだけ残ってその精神が形骸化している部分がたぶんにある。
 神、という言葉が不適切なら、良心といいかえてもいいかもしれない。大きな流れの中に巻き込まれようとするとき、その流れに逆らって自分の正しいと思うところを進んでいく力、正しいと思うものを信じる力。
 この「信じる」という心が大きな流れの前で無力になり、たやすく崩壊してしまうのはよくあることで。『海と毒薬』は、ごく一部の異常者の話ではない。また『海と毒薬』で生体解剖にかかわった人たちが、人間としての何かを欠落していたということも、たぶんない。
 かれらが生体解剖を行ったときの心を狂気とよぶならば、それは日常のすぐ近くでぽっかりと口をあけて待ち構えている。黒い海の流れに飲み込まれて、人はいともたやすくそこに引きずりこまれてしまう。遠い話ではないのだ、それが暗く心に影を落とした。
2006.08.07 | Bookshelf: 本棚  
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