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Amazon.co.jp:夜の樹
 このあいだ、ふらりと県立図書館に足を運んだ。
 眼科の実習で瞳孔を開くための目薬を入れたあとのことで、目薬を入れた左目を通して見える世界だけが妙に白く、光に満ちていてまぶしい感じがしていて。
 ともかく、そういう日の話。
 15時すぎ、昼下がりの晴れた日で、秋になろうとしている(左目だけ白い)世界のなか図書館までの道を歩いた。
 そして唐突にカポーティを読もう、という気になった。
 その気分のまま、カポーティの作品がいま手元に5冊ある。
 たぶんそれは映画「カポーティ」がこの秋に上映されるとつい最近知ったせいで、それなのに「そういえばまだカポーティを読んだことがない」と気づいたせい。
 カポーティの名前を知らない人でも、オードリー・ヘップバーン主演の「ティファニーで朝食を」の名前くらいは知っているかもしれない。その原作が、トルーマン・カポーティという人だ。こう書いておいてなんだけど、わたしもこの程度しか知らないと言ったほうが正確かも。
 借りてきたうちの1冊のなかから最初に読むために選んだのがこの『夜の樹』で、読み始めたとたん、じつは失敗したかと思った。5冊も借りてきたことを、後悔する寸前くらいまでは行った。
 訳が合わない。
 滝口直太郎の訳で読んでいると、イライラしてくるんである。理由はいたってシンプルで、「いらん説明が多い」ということにつきる。わたしはこれがどうも合わなかったようで、文中にいちいち訳注をはさむやり方には閉口してしまった。
 というわけで10の短編からなる『夜の樹』の、最初の1編である『夢を売る女』ではイライラさせられっぱなし。
 ところが、訳注を気にしないで読みすすめていけるくらいに慣れてくると、俄然おもしろくなってくる。訳がどうも苦手だ、ということを除けば話はおもしろいと気づいて、のめりこむように読みきった。
 『クリスマスの思い出』と『感謝祭の訪問客』をのぞけば、全体的にふしぎな話が多い。最初の『夢を売る女』もそうだし、『ミリアム』もそう。最初はわりと日常的なのだけれど、読み進めていくうちに、それが現実なのか夢なのか、境界線がぼやけてあいまいになってとけてしまうのだ。あまりにも自然すぎて、読んでいるうちはさらさらと読めてしまうのだけれど、気づくと夢のなかにいる。起きていると思っているのに知らないうちに眠りこけていて、いつのまにか夢の中、そして戻ってこれなくなっている。よく講義だとか授業だとかを聞いているときに、起きていると思っていたら寝ていて講義の夢を見ていたことがあるのだけれど、そういう感じだ。
 それゆえに、この短編集を読み終わったときに残っていたのは、ふわふわと漂うような心地。着地点がなくて。
 きっと、わかっていないことも多い。わかるとも思えない。カポーティの言葉の魔力に酔わされて、いい気持ちになっている、そんな気がした。
2006.09.25 | Bookshelf: 本棚  
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