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新潮社:yom yom vol.4 グリーンとパープルは好きな色のくみあわせで、「yom yom vol.3」のとなりに「yom yom vol.4」を並べると気持ちがいい。
 このきれいな色の表紙とパンダにすっかりやられてしまって、いそいそと vol.4 も手にとってしまったのだった。
 「yom yom」は小説もいいけれど、エッセイやその他の読み物もなかなかすてきである。
 vol.1 からずっと連載されている「大平先生の yom yom 診療室」は、「診療室にきた赤ずきん」の作者で精神科医の大平健先生と、「だめんずうぉ~か~」の作者・倉田真由美さんが対談するかたちで「現代人の心のヤマイ」をユーモアまじりに斬っていくのが愉快だ。すべてを鵜呑みにはできないけれど、ユーモラスな語り口が楽しい。
 そして今回の特集・「ブンガク散歩」に、ぐっときてしまった。
 京都、東京(銀座・田端・世田谷など)、軽井沢、鎌倉。近代文学ゆかりの地を訪ね歩いた短いエッセイをあつめた特集で、近代と現代がリンクする不思議な感覚にとらわれた。とくに作家・森見登美彦さんが京都大学時代のことにも思いをはせつつ書かれた「登美彦氏、京都をやや文学的にさまよう」が、どこか幻想的な京都の雰囲気とよりそっていて、何度も行ったはずのところをもう一度歩いてみたい気分にさせられる。
 そうだ、京都にいこう。
 もちろん小説もいい。毎号かならず海外の作家をとりあげていて、今回はジョン・アーヴィング、まだ読んだことのない作家だが、自伝的エピソードを興味津々で読みきってしまった。
 また、ここにきて気づいたのは、書き下ろしの作品に(連載というわけではなく)同じ世界の話で、「あ、前の話とつながっていたんだ」と思うものがいくつかあること。これは次も読まないと、わくわくしてしまった。
 次号 vol.5 は11月27日発売だそう。たのしみ!
2007.11.04 | Bookshelf: 本棚  
狩野永徳:チラシ狩野永徳:入場券夜の京都国立博物館
 「卒業試験が終わったら」を合言葉に、「行こう」と決めていた京都国立博物館の「狩野永徳」展。
 友人が仕入れてきた前情報によれば、「平日の朝いちに行っても、すでに200人ほど並んでいる」「行列がものすごい」という。夜間なら日中よりはましだろうということで、夜の20時まで開館している金曜日の夕方を狙って一緒に行ってきた。
 なお、ふだんは金曜日だけの夜間開館(20時まで・入館は19時半まで)であるが、現在、期間中の土曜日と日曜日の開館延長がある。
【京都国立博物館:開館延長のお知らせ

 国立博物館に入るのは、これがはじめてになる。
 お向かいの三十三間堂には何度も訪れているのに(大きな千手観音坐像を中心に、千体の千手観音立像がならぶお堂は圧巻)、国立博物館はいつも屋根をながめるだけだったのだ。

 いろんな意味で、夜の博物館もいい。
 人の数もたぶん日中よりは控えめで、18時半すぎに行ったら待ち時間なしですんなり入れた。
 なにより橙色の光に照らされた博物館の姿が美しい。入場ゲートをくぐると、思わずため息がもれてしまった。「狩野永徳」展が開催されている特別展示館は、煉瓦造りがすてきな洋風の建築で、明治時代に建てられたものだと、あとで知った。
 中に入るとそれなりに人はいるものの、絵がまったく見えないというほどでもない。ただ、絵が低い位置にあるので、休日の日中だと大混雑で見えないかもしれない。加えて目玉の「洛中洛外図屏風」や「唐獅子図屏風」の前には人だかりがしていて、「立ち止まらないでください」との係員さんの誘導もむなしく人の動きが少なかった。特に前者はものすごく細かいので、近寄ってじっくり見たいという人が多いのだろう。

 狩野派の起源は、室町時代にさかのぼる。
 室町幕府の御用絵師であった狩野正信を祖とし、室町・安土桃山・江戸時代のおよそ400年にわたって日本画の職業画家集団として活躍した。
 いまでも、二条城やあちこちの寺院に狩野派の絵を見ることができる。
 その狩野派の絵を、安土桃山時代を生きた永徳を中心に祖父の元信、父親の松栄の作品、狩野一門による工房としての作品をまじえて展示したのが今回の「狩野永徳」展である。ほとんどが失われてしまった数少ない永徳の作品(なかには初出展のものもある)を回顧しようという試みだ。
 狩野派といえば職業画家集団であり、壁画や扇、襖絵などを「仕事」として請け負った。そのため手本に沿って描くことが重視され、そういった背景から、狩野派の絵というのはどちらかといえばパターナリスティックで様式美を重んじるものが多い。
 時代が違うこともあり単純に比較はできないが、だからわたしなんかは金持ちの道楽として自由にのびのび描いていた伊藤若冲のほうが、実は好きだったりする。
 とはいえこの展覧会で見る永徳の絵は、パターナリスティックなだけではない、絵師としての気迫を感じるものもいくつかあって、見入ってしまった。
 大胆にして、かつ繊細。
 勢いのある筆致で描かれたと思えば、近寄ってみると存外に細かい細工が入っていたりする。たとえば菊の花弁がひとつひとつ絵具で盛り上がっていたり、金箔に金で文様を描いたり。
 個人的には、永徳の作品を後世になってから狩野芳崖が写生したという、「永徳筆天瑞寺障壁画図縮図」に興味をひかれた。墨でささっと写生され、うすく色わけされている。壁画の色づけを「金」「コン」「朱」などと書き入れているのがおもしろい。
 それにしても洛中洛外図屏風のこまかさはすごかった。
 永徳は48歳で亡くなっているそうなんだけれども、売れっ子画家で絵の仕事は山のようにあるし、こんなこまかい絵を描いて神経はすりへらなかったのだろうか……ものすごい集中力だと思う。

 そして医師国家試験のマークシート式模擬試験を卒業試験後の2日で解いて、学校に提出したあと見にいくという強行軍がたたって、かなりの眼精疲労があったのが残念。金箔をふんだんに使った豪華絢爛な絵、緻密な描写がなされた絵は、細かいところのくふうに釘付けになりつつも目がちかちかしてよく見られなかった。
 小さめのオペラグラスや双眼鏡を持参している人もみかけて、うまい手だなあと思う。持っていくと、いいかもしれない。

狩野永徳
 2007年10月16日(火)~11月18日(日)
 京都国立博物館
 時間:9時30分~18時(入館は閉館の30分前まで)
 開館延長:金・土・日は20時まで
 休館日:月曜日

【余談】
 NHKの視点・論点で画家の山口晃さんが「狩野永徳の美」について話されていたそうで、これがまた軽妙な語り口でおもしろい。
 一言一句もらさずそのままで文字に起こしてくれているので、要約ではなく読めるのがいい。
 http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/400/5386.html
2007.11.02 | Art: 芸術  
北欧モダン:デザイン&クラフト(作品目録)北欧モダン:デザイン&クラフト(チラシ表)北欧モダン:デザイン&クラフト(チラシ裏)

 卒業試験の期間中だけど、たまにはガス抜きをしないと腐ってしまう!とばかりに、大学の友だちと一緒に秋の京都市美術館まで足を運んだ。
 朝から雨が降っていて、気温もほどよく秋を感じさせるくらい。

 北欧にくわしいわけではないのだけれど、映画「かもめ食堂」のゆる~い雰囲気、マリメッコ (marimekko) のかわいいデザインなど、北欧という言葉には「なんだか、いいな」という印象を前から持っていたんである。
 のぞいてみれば、人の入りもそんなに多くはなく、ゆったりと見られるいい感じの展示で。
 思わず物欲を刺激されてしまう数々の家具や食器や、さまざまな生活用品。家具のなかでも椅子が多く、ゆったりと座れそうなソファや寝椅子から、機能的なものまでどれもおしゃれなデザインで見入ってしまった。どれも座れないのが残念なくらい、いいなあと思うのだけど、とくにエーロ・アアルニオ作の「椅子「ボール」または「グローブ」(球)」 (Ball Chair) というのが好き。まるい球体につつまれる形のソファで、座るとすっぽりと球体の中に収まる。
 北欧といえば「ムーミン」のトーヴェ・ヤンソンも忘れてはいけない。ムーミンの原画をはじめて見て、ムーミンってトロールだったんだ!と衝撃を受けた。知らなかった。
 他にも、アルヴァ・アアルトがデザインしたサナトリウム(結核療養所)の家具だとかを見ると、北欧のデザインは機能的なだけではなく「心地よい暮らし」を提供することに心を砕いているのかな、と感じた。
 北欧のひとたちは冬のあいだ家ですごす時間が長いから、家具にこだわるのだと昔聞いたことがある。
 なにかのヒントになりそうだ、と思いながら、展示会をあとにした。
 (そしてそのあと、卒業試験の勉強会に突入)。

【北欧モダン:デザイン&クラフト】
 2007年9月15日(土)~10月21日(日)
 京都市美術館
 開館時間:午前9時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
 休館日:毎週月曜日(祝日の場合は開館)
2007.10.08 | Art: 芸術  
新潮社:yom yom vol.3 まってました。
 「yom yom vol.3
 vol.1 の赤、vol.2 の白に続く、vol.3 はあざやかな黄緑で。久しぶりに寄った本屋で、この黄緑を目にしたときのうれしさといったら!
 それが7月のなかばごろのお話。
 (いや、でも。これから忙しくなるし)。
 としばらく逡巡したあげく、パンダの誘惑に勝てずにレジに持っていってしまった。ああ…。
 1ヶ月かけて、ちまちまと読みすすめることのできる楽しさ。問題点といえば、「あれもこれも読みたい!他の作品も読みたい」が止まらなくなってしまうことかも。ぐっと、こらえてはいるものの。
 個人的には、「やっぱり星新一はすごい」。
 部分的に読んだ、彼の作品をまとめて読んでみたくなった。
 でも、いつになることやら。
2007.08.13 | Bookshelf: 本棚  
フィラデルフィア美術館展
 京都の夏は暑い。
 市美術館から見える平安神宮の大鳥居は朱色に燃えて、アスファルトの地面がじりじりと焼けつく音が聞こえるような気がする。
 そんななか、友だちと一緒に「フィラデルフィア美術館展」を見にいってきた。
 春にも、「大エルミタージュ美術館展」を彼女と共に訪れている。
 その大エルミタージュ美術館展や、オルセー美術館展、昔に見たゴッホ展の混みぐあいから「印象派の展覧会は混むのかな」と思っていたけれど、意外なことにずいぶんと空いている。普通にしていれば人にぶつかることもなく、ゆっくりと見ることができた。
 ……やっぱり、暑いと外に出る気がしないのかな。

 「フィラデルフィア美術館展」の副題は「印象派と20世紀の美術」で、コローやクールベの写実主義からはじまり、印象派、ポスト印象派、キュビスム、エコール・ド・パリの時代、シュルレアリスムと経てきて現代美術に至るまでの流れで構成されている。
 意図しているわけではないが、わたしが心をひかれるのは、この「写実派~現代美術」にかけての作品が多い。
 (もっとも、見ているのもその時代のものが多いのだけれど)。
 そのなかでも今回とりわけ印象に残ったのは、ジョアン・ミロの「月に吠える犬」だった。小さなプレートに添えられていた「そんなことは知らないよ」という文章も。
 そんなことは知らないよ。でも犬は吠えるのだ、なんて。
 コンスタンティン・ブランクーシの「接吻」もおもしろい。このひとはどういう風に世界を見ているのか、とても気になる。極限まで単純化された彫刻。兵庫県立美術館のコレクション展にも、彼の「新生」という作品があって、金色のつやつやした卵のようなそれがすごく好きだ。
 他の絵も、ひとつひとつおもしろさがあって、見ていて楽しかった。
 ゴーガン、ロダン、マティス、キリコ。
 なにより驚いたのは、ピカソの「3人の音楽師」。
 このフィラデルフィア美術館展を訪れる前日、冒頭の彼女も含めて、高校時代の友人3人が神戸に集まった。わたしと、彼女以外にもうひとり。そのもうひとりが5月にニューヨークに行き、MoMA(ニューヨーク近代美術館)で「おみやげに」と絵はがきを買ってきてくれた、その絵はがきが「3人の音楽師 (Three Musicians)」だったんである。
 MoMAとフィラデルフィア美術館のものでは、微妙に違う。
 違うのだが、偶然の出会いに驚き、うれしくなった。
 また、この「3人の音楽師」は、ギョーム・アポリネールの死を追悼したものらしい。アポリネール!
 高校時代、フランス詩にかぶれて、もちろんアポリネールのものもいくつか読んだ。なかでも「ミラボー橋」がお気に入りで、「3人の音楽師」を見たとたん冒頭の一節が頭に流れる。
 ミラボー橋の下を セーヌ川が流れ
 われらの恋が流れる
 わたしは思い出す
 悩みのあとには楽しみが来ると

 (後略:堀口大學 訳)

 面白い展覧会だった!
 京都は暑かったけれど。
 この暑さも悪くない、かもしれない。

【フィラデルフィア美術館展】
 2007年7月14日(土)~9月24日(月・休)
 京都市美術館
 開館時間:午前9時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
 休館日:毎週月曜日(祝日の場合は開館)
2007.08.10 | Art: 芸術  
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